東日本の装飾古墳で、前方後円墳としては唯一とされる。
虎塚古墳とはどんな古墳か
虎塚古墳はひとことで言えば東日本でただ一つの装飾された前方後円墳です。茨城県ひたちなか市大字中根にあり、文化庁は「中根台地上に築かれた全長約60メートルの前方後円墳で、周濠をともなっている」としています。
装飾古墳は九州に集中しています。東日本では数が限られ、しかもその多くは横穴墓や円墳です。文化庁は、この古墳を東日本で発見された装飾古墳のうち前方後円墳としても唯一のものとして貴重としています。
壁画については、文化庁が次のように記しています。
玄室内壁は、床面上を含め全面に白土を塗り、天井・床面では白土上全面を赤色に塗彩している。この古墳を特色づける壁画は、奥壁と東・西壁にある。それは白土を下地に三角連続文・円文・渦文などの幾何学文様、大刀・槍・靱・楯などの武器、武具類などの絵画が赤色で描いてある
白の下地に赤という二色の構成です。石室の一般公開は年に数回に限られます。
虎塚古墳の読み方と別名
読みは「とらづかこふん」です。
名の由来については、公式のページで確かめられませんでした。「虎」の字が壁画の文様に関わるのか、地名によるのかは、はっきりしません。
隣接して十五郎穴横穴群(じゅうごろうあなよこあなぐん)があります。ひたちなか市は、この横穴群と虎塚古墳を一体として保存活用計画を進めています。
虎塚古墳(とらづかこふん)
文化庁・ひたちなか市が用いる名。
十五郎穴横穴群(じゅうごろうあなよこあなぐん)
隣接する横穴墓群。虎塚古墳と一体で保存活用計画が立てられている。
虎塚古墳は誰の墓か
虎塚古墳の被葬者はわかっていません。宮内庁の治定もありません。
文化庁の解説にも、ひたちなか市の案内にも、被葬者に関する記載は見あたりませんでした。
手がかりになるのは壁画の内容です。奥壁と東西の壁に描かれているのは、三角連続文・円文・渦文といった幾何学文様と、大刀・槍・靱・楯といった武器と武具です。
武器と武具を壁に描くのは、九州の装飾古墳にも共通します。福岡県の王塚古墳にも靫(矢筒)と盾が描かれています。
武具を描くという発想が、九州から東日本まで届いていたことになります。その道筋をたどれるかどうかが、この古墳をめぐる問いのひとつです。
被葬者は、この地域を治めた有力者と考えられますが、それ以上のことはわかりません。
公式の説明:わかっていない
被葬者に関する記載は見あたらない。
虎塚古墳の大きさと形
文化庁は「中根台地上に築かれた全長約60メートルの前方後円墳で、周濠をともなっている」としています。
石室は小さく、内法で長さ3.07メートル、幅1.4メートル、高さ1.5メートル。人が立って歩ける高さではありません。
この小さな石室の内壁が、床面まで含めて全面に白土で塗られ、天井と床面は白土の上をさらに赤で塗ってあります。
壁画は奥壁と東・西壁にあります。白い下地の上に、赤い顔料で文様と絵が描かれました。
墳丘の全長:約60メートル
石室の内法:長さ3.07メートル・幅1.4メートル・高さ1.5メートル
墳形:前方後円墳・周濠をともなう
虎塚古墳はいつ作られたか
虎塚古墳の場所と行き方(観光情報)
隣接して十五郎穴横穴群があり、ひたちなか市は両者を一体とした保存活用計画を進めています。
訪ねる前に、ひたちなか市の公式ページで公開の日程をご確認ください。公開は春と秋の年数回に限られます。
虎塚古墳(虎塚古墳史跡公園)
虎塚古墳(虎塚古墳史跡公園)の住所:茨城県ひたちなか市大字中根
交通:公式に確認できませんでした
駐車場:隣接する埋蔵文化財調査センターの駐車場を利用する
料金:公開時の見学料は大人160円(団体130円、20人以上)、小人80円(団体60円、20人以上)
内部見学:石室の内部は年数回の一般公開時のみ。ふだんは非公開
石室の内部を見られるのは、年に数回の一般公開のときだけです。壁画を守るためです。
ひたちなか市が告知する2026年秋の公開は、11月3日、11月6日から8日、11月12日から15日。時間は午前9時から午後0時15分、午後1時30分から午後3時45分です。
車で行く場合は、隣接する埋蔵文化財調査センターの駐車場を利用します。
虎塚古墳の発見と調査の歩み
東日本で唯一の、装飾された前方後円墳
装飾古墳は、九州に集中しています。福岡県の王塚古墳、熊本県のチブサン古墳など、有名なものはいずれも九州です。
東日本にも装飾古墳はありますが、多くは横穴墓か円墳です。前方後円墳の石室に絵を描いた例はほとんどありません。
文化庁は、虎塚古墳を東日本で発見された装飾古墳のうち前方後円墳としても唯一のものとして貴重としています。
九州で生まれた「石室に絵を描く」という考えが、太平洋岸を通って常陸まで届いた。その一点の証拠がこの古墳です。
全長は約60メートル。大きな古墳ではありません。しかし、絵があることで別格の位置を占めています。
白の上に赤
虎塚古墳の壁画は、二色でできています。
文化庁の記述はこうです。玄室の内壁は床面まで含めて全面に白土を塗り、天井と床面は白土の上をさらに赤色で塗る。そして奥壁と東西の壁に、白土を下地として赤で絵を描く。
描かれているのは、三角連続文・円文・渦文などの幾何学文様と、大刀・槍・靱・楯などの武器・武具です。
熊本県のチブサン古墳が赤・白・黒の三色、福岡県の王塚古墳が赤・黄・緑・黒・白・灰の六色であるのに対し、虎塚古墳は白と赤の二色。
色数が少ないぶん、文様がくっきりと見えます。
年に数回しか開けない
虎塚古墳の石室は、ふだんは閉じられています。
壁画を守るためです。石室を開けると外気が入り、温度と湿度が変わります。それが壁画の劣化につながることは、高松塚古墳のカビの問題ではっきりしました。
ひたちなか市は、年に数回だけ一般公開を行っています。2026年秋の公開は11月3日、11月6日から8日、11月12日から15日で、時間は午前9時から午後0時15分と午後1時30分から午後3時45分です。
見学料は大人160円、小人80円。20人以上の団体はそれぞれ130円、60円です。
同じ考え方は、福岡県の王塚古墳(春と秋の年2回)、熊本県のチブサン古墳(土日祝の1日2回、各10名)にも見られます。壁画のある古墳は、開ける回数そのものが管理されています。
虎塚古墳から出土したもの
副葬品についての公式の記載は、確かめられませんでした。
この古墳から得られている情報は、そのほとんどが壁画によるものです。
装飾壁画
白土の下地に赤で描く。三角連続文・円文・渦文などの幾何学文様と、大刀・槍・靱・楯などの武器武具。
白土
玄室の内壁に床面まで含めて全面に塗られていた。
虎塚古墳と関連する古墳
虎塚古墳についてよくある質問
虎塚古墳は誰の墓ですか。
わかっていません。文化庁の解説にもひたちなか市の案内にも、被葬者に関する記載は見あたりませんでした。
虎塚古墳の石室は見学できますか。
年に数回の一般公開のときだけです。2026年秋は11月3日、11月6日から8日、11月12日から15日に公開されます。見学料は大人160円、小人80円です。
虎塚古墳の壁画は何色ですか。
白と赤の二色です。玄室の内壁を白土で塗り、その上に赤で三角連続文・円文・渦文などの文様と、大刀・槍・靱・楯などの武器武具を描いています。
虎塚古墳の大きさはどれくらいですか。
文化庁は全長約60メートルの前方後円墳としています。石室は内法で長さ3.07メートル、幅1.4メートル、高さ1.5メートルです。
虎塚古墳はどこにありますか。
茨城県ひたちなか市大字中根です。車の場合は隣接する埋蔵文化財調査センターの駐車場を利用します。
虎塚古墳と併せて覚えたい言葉・用語
装飾古墳(そうしょくこふん)
石室や石棺に文様や絵を描いた古墳。九州に多く、東日本では数が限られる。
白土(はくど)
白い粘土。壁画の下地に塗られる。
三角連続文(さんかくれんぞくもん)
三角形を連ねた文様。装飾古墳によく描かれる。
横穴墓(よこあなぼ)
崖などに横穴を掘って造った墓。古墳とは造り方が違う。
虎塚古墳の参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。