赤・白・黒の三色で文様を描いた、熊本を代表する装飾古墳。
チブサン古墳とはどんな古墳か
チブサン古墳はひとことで言えば名が文様から付いた装飾古墳です。熊本県山鹿市城にあり、山鹿市は「古墳時代後期(6世紀)頃に造られた装飾古墳」としています。
文化庁は「チブサン古墳は墳丘長44メートルの前方後円墳で、複室の横穴式石室をもち」としています。
見どころは石屋形に描かれた文様です。山鹿市は次のように書いています。
石棺の壁には赤、白、黒の三色で、丸や三角、菱形などの図が描かれていています。正面の二つ並んだ円が女性の乳房に見えることから『チブサン』という名がついたと言われています
古墳の名が、文様の見え方から付いているという珍しい例です。
山鹿市の英語による解説では、赤色は酸化鉄を多く含む焼土、白と黒は粘土とマンガンを使ったと説明されています。顔料の材料まで調べられています。
チブサン古墳の読み方と別名
読みは「ちぶさんこふん」です。片仮名で書きます。
名の由来は文様です。山鹿市は、石屋形の正面に二つ並んだ円が描かれており、それが女性の乳房に見えることから「チブサン」という名がついたと言われる、としています。
古墳の名は、地名か形か伝承に由来するのがふつうです。石室の文様が名になった例はまれです。
文化庁の指定名称は、隣接するオブサン古墳と合わせて「チブサン・オブサン古墳」です。
チブサン古墳(ちぶさんこふん)
片仮名で書くのが正式。文様が乳房に見えることに由来するとされる。
チブサン・オブサン古墳(ちぶさん・おぶさんこふん)
文化庁の指定名称。隣接するオブサン古墳と合わせた名。
オブサン古墳(おぶさんこふん)
隣接する別の古墳。文化庁は6世紀後半の築造で、チブサン古墳に後続する首長墓とする。
チブサン古墳は誰の墓か
チブサン古墳の被葬者はわかっていません。宮内庁の治定もありません。
山鹿市の案内にも、文化庁の解説にも、被葬者に関する記載は見あたりませんでした。
手がかりになるのは、周辺から見つかっている石人です。山鹿市の英語による解説には、高さ150センチメートル・幅80センチメートルの人物をかたどった石像が近くで見つかったこと、原品は東京国立博物館が所蔵し、現地にはレプリカが展示されていることが記されています。
石人は、福岡県の岩戸山古墳にも並べられていました。筑紫君磐井の墓とされる古墳です。石人という九州北部の風習が、熊本のこの古墳にも及んでいたことになります。
文化庁は、隣接するオブサン古墳を「6世紀中ごろのチブサン古墳に後続する首長墓」としています。つまりチブサン古墳の被葬者も、この地域の首長であったと考えられます。
公式の説明:わかっていない
被葬者に関する記載は見あたらない。
文化庁の位置づけから読み取れること:この地域の首長
隣接するオブサン古墳を「チブサン古墳に後続する首長墓」とすることから、チブサン古墳も首長墓と考えられる。
チブサン古墳の大きさと形
墳丘長について、公表されている数字が食い違っています。
文化庁は「墳丘長44メートルの前方後円墳」としています。いっぽう山鹿市の英語による解説では、長さを約55メートルとしています。
どちらが新しい測量かは確かめられませんでした。両方を並べておきます。
石室は複室の横穴式石室です。石屋形の石材の寸法は、山鹿市の英語による解説によれば長さ2.3メートル、奥行0.9メートル、高さ1.45メートル。
文化庁のデータベースには、写真の項目として「チブサン古墳石屋形奥壁」「石屋形右壁」「石屋形左壁」が挙げられています。
墳丘長:44メートル(山鹿市の英語による解説では約55メートル)
石屋形の石材:長さ2.3メートル・奥行0.9メートル・高さ1.45メートル
石室の構造:複室の横穴式石室
石室入口の大きさ:高さ約80センチメートル・幅約50センチメートル
近くで見つかった石人:高さ150センチメートル・幅80センチメートル(原品は東京国立博物館所蔵)
チブサン古墳はいつ作られたか
チブサン古墳の場所と行き方(観光情報)
屋外の部分と、石棺の野外での再現展示は常時見学できます。石室の内部だけが、人数と時間を限った公開です。
近くで見つかった石人の原品は東京国立博物館にあり、現地に置かれているのはレプリカです。
チブサン古墳
チブサン古墳の住所:熊本県山鹿市城字西福寺
交通:山鹿市立博物館(熊本県山鹿市鍋田2085)からチブサン古墳まで約1キロメートル(車2分・徒歩15分)
駐車場:公式に確認できませんでした
料金:見学料は個人(14名以下)で一般・大学生100円、高校生以下50円。団体(15名以上)で一般・大学生60円、高校生以下30円
内部見学:土曜・日曜・祝日の10時と14時、各10名まで。事前の申し込みが必要
石室の内部を見られるのは、土曜・日曜・祝日の10時と14時、各10名までです。申し込み先は山鹿市立博物館(熊本県山鹿市鍋田2085、電話 0968-43-1145)です。
山鹿市は「チブサン古墳まで自力で行ける方に限ります」としています。博物館から古墳までは約1キロメートル(車2分・徒歩15分)です。
石室の入口は高さ約80センチメートル、幅約50センチメートルと大変狭くなっています。
チブサン古墳の発見と調査の歩み
文様が名前になった
「チブサン」という名は、文様の見え方から来ています。
山鹿市の説明はこうです。
石棺の壁には赤、白、黒の三色で、丸や三角、菱形などの図が描かれていています。正面の二つ並んだ円が女性の乳房に見えることから『チブサン』という名がついたと言われています
二つ並んだ円。これが乳房に見えるというので「乳房さん」がなまって「チブサン」になったとされます。
古墳の名は、ふつう地名(誉田御廟山古墳)、形(石舞台古墳)、伝承(今城塚古墳)に由来します。石室の中の文様が名になった例は、ほとんどありません。
それだけ、この文様が土地の人の目に焼きついていたということになります。隣接する古墳の名「オブサン」も、産(うぶ)に由来するとする説があります。
顔料の材料まで調べられている
チブサン古墳の壁画は赤・白・黒の三色でできています。
山鹿市の英語による解説には、それぞれの色の材料が記されています。赤は酸化鉄を多く含む焼土、白と黒は粘土とマンガンです。
どこにでもある土と鉱物から、色を作っています。特別な顔料を輸入したのではありません。
色数を比べると、熊本のチブサン古墳が3色、福岡の王塚古墳が6色(赤・黄・緑・黒・白・灰)、茨城の虎塚古墳が2色(白と赤)です。
装飾古墳は、その土地で手に入る材料で描かれました。色数の違いは、技術と材料の差でもあります。
石人が近くから見つかった
チブサン古墳の近くからは、石人が見つかっています。
山鹿市の英語による解説によれば、高さ150センチメートル、幅80センチメートルの人物をかたどった石像です。原品は東京国立博物館が所蔵し、現地にはレプリカが展示されています。
石人は、九州北部に特有の風習です。福岡県八女市の岩戸山古墳には、武装した石人や石馬、石盾、石壺が並べられていました。筑紫君磐井の墓とされる古墳です。
同じ風習が、熊本のこの古墳にも及んでいました。
土の埴輪ではなく、石で人を作って墓に置く。九州北部から中部にかけての一帯が、ひとつの文化圏を成していたことを示しています。
10人ずつしか入れない
チブサン古墳の石室は、厳しく守られています。
山鹿市が定める公開の条件は次のとおりです。土曜・日曜・祝日の10時と14時、各10名まで。申し込みは山鹿市立博物館へ。博物館から古墳までは約1キロメートルあり、「チブサン古墳まで自力で行ける方に限ります」とされています。
さらに石室の入口は高さ約80センチメートル、幅約50センチメートル。かがまなければ入れません。
見学料は一般・大学生100円、高校生以下50円。団体(15名以上)はそれぞれ60円、30円です。
壁画のある古墳は、どこも公開の回数と人数が絞られています。福岡県の王塚古墳は春と秋の年2回、茨城県の虎塚古墳は年に数回。開けるたびに壁画は傷みます。
チブサン古墳から出土したもの
副葬品についての公式の記載は、確かめられませんでした。
この古墳の価値は、石屋形に描かれた文様そのものにあります。
装飾壁画
赤・白・黒の三色で、丸・三角・菱形などの文様を石屋形に描く。
石人
高さ150センチメートル、幅80センチメートル。原品は東京国立博物館所蔵、現地はレプリカ。
チブサン古墳と関連する古墳
チブサン古墳についてよくある質問
チブサン古墳は誰の墓ですか。
わかっていません。山鹿市の案内にも文化庁の解説にも被葬者の記載はありません。この地域の首長と考えられます。
チブサンという名前の由来は何ですか。
石屋形の正面に描かれた二つ並んだ円が、女性の乳房に見えることに由来すると言われています。文様が古墳の名になった珍しい例です。
チブサン古墳の石室は見学できますか。
できます。ただし土曜・日曜・祝日の10時と14時、各10名までで、山鹿市立博物館への申し込みが必要です。見学料は一般・大学生100円、高校生以下50円です。
チブサン古墳の大きさはどれくらいですか。
文化庁は墳丘長44メートルとしていますが、山鹿市の英語による解説では約55メートルとしており、数字が食い違っています。どちらが新しい測量かは確かめられませんでした。
チブサン古墳はどこにありますか。
熊本県山鹿市城字西福寺です。山鹿市立博物館(山鹿市鍋田2085)から約1キロメートル、車で2分・徒歩15分です。
チブサン古墳と併せて覚えたい言葉・用語
石屋形(いしやかた)
石室の奥に設けた屋根形の構造。遺体を安置する。九州の装飾古墳に多い。
複室(ふくしつ)
石室が前室と後室に分かれている造り。
マンガン(まんがん)
黒色の顔料に使われる鉱物。チブサン古墳では白と黒の顔料に用いられた。
石人(せきじん)
石で作った人の像。九州北部から中部の古墳に並べられた。
チブサン古墳の参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。